新型コロナウイルスの流行によって、さまざまな企業の業績悪化が懸念されています。直接的な影響を受けるサービス業や接客業だけでなく、原材料コストの高騰や消費減退に伴って製造業すら圧迫を受けつつあるのです。
そのようなコロナ禍の中、恒常的に掛かるコストの見直しや経費節減等を、今だからこそするべきではないでしょうか。
今回は照明をLED化することによって、どのように経費節減に寄与するのか?解説していきましょう。
日々の電気料金を圧縮
家庭の照明と違って事業所等で使用されている照明器具は量も膨大ですし、電気使用量も比べ物になりません。
いち早く経費節減に取り掛かるには、照明から見直す方法が最善だと言えるでしょう。
蛍光ランプの場合
一般事業所や事務所等で最も使用される割合の高い照明が「蛍光ランプ」です。FLRやFHFといった形式が多いわけですが、ごく一般的なFLR40を例にしてみましょう。
2灯式の蛍光灯器具の場合、「FLR40SW/M/36」といったように40形でありながら消費電力が36Wのランプが多いです。
36W×2灯ですから72Wがランプ本体の消費電力となります。
しかし器具内に付属している安定器も電力を消費しますから、その消費電力も加算しなければなりません。
72W+5~8Wで、おおむね蛍光灯器具1灯の消費電力は80W程度となります。
照明をLED化した場合、既存器具はそのままで電源バイパス工事をした場合、FLR40相当のLEDランプですと消費電力は12W程度となります。
バイパス工事によって安定器は取り外されますから、単純に以下の通りとなります。
12~15W×2灯=24~30W
さらに照明各メーカーが力を入れているLEDベース照明の場合も同様に消費電力は低くなります。(40W×2灯相当のベースライトの場合、消費電力は24.7W)
結論から言えば、既存器具にLEDランプのみ取り替える場合と、LEDベースライトに変更した場合は従前の1/3程度の電気料金となるわけです。
水銀ランプの場合
既存照明に水銀ランプを使用しているケースでは、電気料金の差はさらに顕著となります。
仮に400Wタイプの水銀ランプを使用している場合、置き換え用として高天井LED照明器具が用いられます。
メーカー各社が販売している高天井LEDの消費電力は120~150W前後のものが多いですから、高い消費電力を約3~4割程度にまで電気料金を圧縮することが可能なのです。
照明器具の稼働時間が長ければ長いほど、コストメリットも高くなります。いわゆる「元が取れやすい」ということですね。
ちなみに水銀条約によって、蛍光水銀ランプは2020年に製造・輸入が禁止されています。
補助金や昨今の情勢について
電力負荷を低減し、環境にも優しい省エネ関連の補助金や助成金は、太陽光発電や産業ヒートポンプ等だけでなくLED照明にも適用されています。
国や自治体が行う補助金制度を有効に利用することもイニシャルコストの節減に役立つでしょう。
また蛍光ランプの価格高騰もLED化への追い風になっていると言えます。
経産省が行う省エネ補助金
2019年度から減額されたものの、2020年以降も予算化されるとされています。
また2019年度以降は大企業による申請は不可となっており、中小企業が対象となっています。
LED照明の場合は「高効率照明」という設備単位となり、工場・事業所単位でLED化する場合は、設備費・工事費が補助の対象となります。
また補助金額については上限1~15億円、下限は100万円となっています。
設備単位についても補助金の対象となりますし、公募期間や手続き等についての詳細は「環境共創イニシアチブ」のウェブサイトで確認しましょう。
蛍光ランプの価格高騰が追い風に
LED導入の追い風となっている理由の一つに、蛍光ランプの価格高騰というものがあります。
2019年秋の段階で日立アプライアンスが蛍光ランプ事業から撤退し、東芝ライテック、三菱電機照明といった照明メーカーも徐々に生産終了品目を減らしてきています。
これはLED照明の普及によって蛍光ランプ等の既存照明が徐々に減っていることを示すものであり、当然売れなければ数を作りませんし、数を作らなければ原材料コストは上昇するのです。
実際に2020年10月から蛍光ランプ等の価格改定に踏み切るメーカーもありますし、今後は「売れる商品」しか作らないという可能性も否定できないのです。
従来、1,000円で買っていた蛍光ランプが1,500円に値上がりすると、買い控えも起こりますし、LED化の良いタイミングだと考える方もいるでしょう。
事業者や消費者層からすれば、そういった意味ではマイナス要因となりますがLED化の追い風と言えなくもありません。
また蛍光ランプにはレアアースが使用されており、中国を始めとして各国から輸入しているのが現状です。
もし何らかの理由でレアアースの輸入が滞れば、蛍光ランプの価格に直接反映されることになります。最近の米中関係を見ても、不安定要素が付きまとっているわけです。
まとめ
コロナ禍におけるLED化のメリットを、「経費節減」と「補助金」、そして「蛍光ランプの高騰」という観点から見たわけですが、景気後退しつつある今だからこそ積極的なランニングコストの圧縮が必要なのではないでしょうか。