電力自由化とは

2016年に電力が全面自由化されニュースでも話題になりました。これによって電力会社を自由に選ぶことができることが浸透してきましたが実は電力がはじめて自由化されたのは2000年です。

この時の自由化は一部の大口需要家のみだった為、世間では広く認知されることもなく電気は地域電力会社と契約して使うものというのが当たり前でした。

大口需要家というのは特別高圧500KW以上の大規模な需要家のことで大規模工場やオフィスビル、デパートなどがこれにあたります。

工場

オフィスビル

この時すでに自由化されていた自由化ですが世間ではあまり知られることがありませんでした。

それから2005年に自由化領域が拡大し高圧50KW以上が自由化の対象となり、その後一般家庭向けの低圧領域でも自由化が決定し2016年4月に「全面自由化」となり話題となりました。

この全面自由化によって一般家庭でも電力会社を選ぶことができるようになり2018年現在では新規参入した電力会社も増え価格競争が激しさを増し新電力へ乗り換える事業所や家庭が急速に加速しました。

電力自由化は私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょか。一番は価格の値下がりを期待できるという事です。これまでは電気は地域電力会社の独占であったため住む場所によって地域の電力会社と電気の契約をしてきました。ところが新電力の参入により価格競争が生まれ私たちが自由に電力会社を選ぶことができるようになったのです。

東日本大震災の原子力発電所の事故以降、日本各地の原子力発電所が停止されたことで一般家庭から大規模な需要家まで電気代は10%~18%値上げになりました。

しかし電力全面自由化によって新たな競争が生まれ、より良いサービスが生まれてくる可能性が出てくることを期待できるようになりました。

この電力の全面自由化は昔の通信業界に非常に似ています。

昔電話と言えばNTTでしたが今ではソフトバンク、KDDIを含め3大キャリアが君臨しています。

そして固定電話にしても携帯電話にしても自由に電話会社を選ぶことができ昔に比べ電話代はとても安くなりました。

電力業界も通信業界と似たような足跡を辿っていくのではないでしょうか。

電力自由化までの流れ

1995年、それまで30年以上改正されてこなかった「電気事業法」が改正され2016年に『電力自由化』がスタートしました。

電気事業法による改正は「発電」「送電」「小売」を自由化するというものでしたが自由化のスタート時は発電のみだった為ため、発電した電気を電力会社に卸売りをすることだけだけでした。それから1999年にはじめて電気の「小売」が一部自由化されます。

以下、全面自由化までの流れをまとめてみました。

出来事
2000年  特別高圧市場の自由化スタート 契約電力500KW~
2004年  高圧市場の自由化スタート 契約電力50KW~
2011年  東日本大震災
2012年  電力システムの改革検討
民主党政権時代に電気事業改正法案が閣議決定。これにより小売と発電の全面自由化が決定
2013年  全国の原子力発電所が全基停止
2015年  電力システム改革第一段階 広域系統運用機関の設立
2016年  電力システム改革第二段階 低圧市場が自由化スタート
電力全面自由化で大きく話題となるが切り替えのスピードは鈍い
2020年  電力システム改革第二段階
発送電分離で電力会社が事業別に独立する。発電・送配電・小売の3つの事業会社に分かれる

新電力とは

既存の大手電力会社である一般電気事業者(現在は北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力など)を地域電力会社とよび特定電気事業者をPPS(Power Producer and Supplier)と呼び新規参入した電力会社のことを指しいます。

PPSを分かりやすく言い換えた新語として「新電力」という言葉が使われています。

新電力の仕組み

新電力の電気は停電を起こさないのか?

新電力は送電線を保有しておらず一般電気事業者の送電線をお借りして電気を供給する仕組みになっています。

そのため新電力の発電設備に万が一トラブルが発生しても停電になることはありません。万が一新電力にトラブルが発生した場合は他の発電所へ電気の増量要請をします。

それでも供給が追い付かない場合は日本卸電力取引所から調達し供給をする仕組みになっています。

さらにこれでも供給できない事態であれば一般電気事業者とのバックアップ契約によって一般電気事業者が不足分の電気を供給する仕組みになっています。

新電力の仕組み

これは一般電気事業者の送電線を借りる契約で担保されているため新電力に切替えてもこれまで通り安心して電気を利用することができるようになっています。

既に数百社ある新電力ですが、どの新電力と契約してもこの仕組みは変わりません

また電気には品質は関係ないため物理的にも今までと同じ電気が送られ電気の質・安定性は全く同じです。

これまでは一般電気事業者(東京電力など)で発電した電気は一般電気事業者(東京電力など)の送電線を経由して私たち需要家に届けられていました。

新電力に切替えた場合は新電力の発電設備で発電された電気が一般電気事業者の送電線を経由して需要家に供給されます。

電気の発電方法は様々ありますが原子力発電、火力発電、風力発電、水力発電などどのような発電のされかたでも

電気の品質に良し悪しはありません。電気は電気ということです。

発電方法によってコストや資源の枯渇問題、二酸化炭素の問題など様々あり新電力でも火力発電をメインとしている所もあれば新エネルギーを中心に発電をしているところもあります。

電力の自由化によって私たちが電気を選ぶ基準としてコストや発電方法などさまざな要素があるのです。
現在、新電力(PPS)として届出でがある業者は全国で約660社ほどあり(2015年5月時点)新電力が電力を供給できる範囲はこれまで契約電力が50Kw以上の高圧受電の需要家に対して電気を供給することができましたが2016年の全面自由化によって、一般家庭や商店などの低圧受電でも供給が可能になります。

電力自由化によって参入した新電力

新電力に参入した企業には石油大手のJXTGエネルギー、昭和シェル石油をはじめ通信系のソフトバンク、楽天、都市ガスの東京ガス、大阪ガス、西武ガスなど様々です。地域電力会社の東京電力や関西電力も新電力との競争に負けじと地域の垣根を越えて反撃の攻勢を強めいます。

業種電力会社
都市ガス・LPガス会社東京ガス北海道ガス大阪ガス西部ガス静岡ガス中央セントラルガス
通信・TV楽天でんきソフトバンクでんきauでんきJ:COM電力ハルエネeo電気
石油・エネルギーENEOSでんき昭和シェル石油
運輸・旅行東急でんきHISでんきHTBエナジー
自治体・スポーツ水戸電力湘南電力みやまスマートエネルギー
小売・商社親指でんきまちエネ丸紅新電力スマ電
PPS(特定規模電気事業者)ミツウロコグリーンエネルギーLooopでんきナンワエナジーイーレックスF-Powerエネット

【業種別】新電力の特徴

新電力の競争が激化するなかでカギを握るのは一体どこなのか。

経済産業省・資源エネルギー庁発表の資料によると、特定規模電気事業者 799 社のうち、2016年 1月時点で電力販売実績があるのはわずか118社しかありません。

それ以外の681社85%以上の企業が特定規模電気事業者の届け出を提出しているものの、実際に新電力会社としては稼動できていない現状があります。

新規参入組や資本力のない企業が淘汰されだし、今後生き残っていく新電力は大きく分けて

「石油系」・「通信系」・「鉄道系」・「ガス系」・「商社系」の5つに分けることができます。

その中でも特に石油系、ガス系の新電力は優勢といえます。その理由を業種ごとに解説していきます。

石油系 新電力の特徴

石油・エネルギー系はJXTGエネルギー出光昭和シェル石油が代表的な新電力です。

JXTGエネルギーのENEOSでんき

ENEOSでんき

石油系の新電力の強みは何といっても自前の電源設備(発電所)を所有していることです。

JXTGエネルギーは2017年4月に東燃ゼネラル石油と合併しJXTGエネルギーと商号を変えました。

JXはガスリンスタンドのENEOSを運営、東燃ゼネラル石油はモービル、エッソ、ゼネラルを運営している石油会社で、この2社が合併した事でガソリン販売シェア50%の国内第1位、売上高10兆円規模の企業となりました。

JXTGの発電設備は小売事業用電源用が全国に7カ所、IPP用は2箇所あり燃料調達の優位性とガス化複合発電などの先進技術で全国に展開しているほどです。

JXTGエネルギーの新電力のブランドには「ENEOSでんき」と「myでんき」の2つがあります。

なぜ2つのブランドがあるのかというと、元々JXTGエネルギーは2つの会社のM&Aによってできた企業だからです。その2社とは東燃ゼネラル石油とJXです。2016年の電力自由化の時点では東燃ゼネラル石油が「myでんき」、そしてJXが「ENEOSでんき」を別々に運営していました。

M&A後は両方のブランドを残しながら2018年現在に至っていますがガソリンスタンドのエッソやモービルが姿を消しているのはご存知だったでしょうか。東燃ゼネラルが元々運営していたガソリンスタンドがエッソ、モービルであり、これがENEOSに統一されることになりました。

ENEOSがオリンピックのゴールドパートナーとしCMが盛んに行われているように将来は新電力のブランドも「ENEOSでんき」に統合されるかもしれません。

またJXTGエネルギーは新電力の中でも数少ない自家発電の設備をもった企業です。新規参入した新電力の中には市場で電力を調達して販売している企業が大多数ですが電力市場で電気を調達するということは市況に影響し易くなり原油の価格が上がることで市場の価格競争力に影響を受けやすくなるリスクを抱えます。

しかし自前の電源を持っていることで市況に影響されるリスクを減らす事ができるので価格競争力に強い新電力の立ち位置にいることができることになります。

JXTGエネルギーが供給できるエリアは東京電力、中部電力、関西電力の管内です。高圧受電は東北電力管内も可能ですが2018年の段階では全国まではカバーされていません。

大手石油会社という信頼と実績があるJXTGエネルギーなら新電力としても安心できるといえます。

JXTGエネルギー株式会社は、2017年4月、JXホールディングス株式会社と東燃ゼネラル石油株式会社の経営統合により発足した総合エネルギー会社です。エネオス、エッソ、モービル、ゼネラルのブランドで全国展開するサービスステーション(給油所)をはじめ、石油製品および石油化学製品などの精製・製造および販売、ガス・石炭の輸入および販売、電気の供給などを行っています。

 JXTGエネルギーの2大ブランド

ENEOSでんき myでんき

myでんき

通信系 新電力の特徴

通信系・鉄道系は「ソフトバンクでんき」、「auでんき」、「東急パワーサプライ」、「楽天でんき」「ハルエネでんき」などです。

ソフトバンク、auはすでに携帯電話のインフラを持っているためスマホやインターネット回線、固定電話とのセット割引での効果が期待できます。

法人や飲食店など一般家庭より電気代が高い事業者はハルエネでんきがおススメです。

ソフトバンクでんき

「ソフトバンクでんき」などの通信系の強みは通信インフラと既存顧客を抱えているところにあります。

「ソフトバンクでんき」は「スマホ」もしくは「ネット」と「でんき」をまとめる【おうち割 でんきセット】 「スマホ」+「ネット」+「でんき」を3つまとめる【おうち割 光セット】など、 ソフトバンクならではの強みをいかしたプランを展開し顧客獲得をしシェア拡大をしていくでしょう。

auでんき

「auでんき」はスマホ、auひかりとの組合せで「auでんきセット割り」で毎月の電気料金の最大5%相当分を、au WALLET プリペイドカードへキャッシュバック(チャージ)されるプランを打ち出しています。10,000円の電気代であれば500円がキャッシュバックされるということです。

ハルエネでんき

「ハルエネ」でんきは店舗や事務所など一般家庭より電気の使用量が多いと電気代の削減効果が見込めるプランになっています。

契約時に事務手数料が3,780円(税込み)でかかり、契約期間が3年と縛りがあります。

途中解約する場合は契約解除料として9,800円(税込み)がかかるので注意しましょう。

ガス系 新電力の特徴

ガス系の新電力は東京ガス、大阪ガス、北海道ガスなどになります。

ガス会社での特徴は、やはりガス料金とのセットプランになります。

東京ガスではガスとセットで生活まわりの駆けつけサービスを無料で受けれたり、毎月の電気代に応じてポイントが貯まるなどの特典が付いています。

商社・PPS系 新電力の特徴

商社系では自然エネルギー(太陽光発電所)を供給するLooopでんき、丸紅新電力、まちエネ、旅行代理店のEchange H.I.S.、親指でんき、が参入しています。

HISなどは完全な異業種の参入となりますが、どうやって電力の供給をしているのかというと、HISはHTBエナジーと業務提携をしており、HTBエナジーは再生可能エネルギーやLNG火力発電等クリーンエネルギーを中心とした電源の開発や新電力(PPS)業務を行うことで電気の供給を可能にし、既存電力会社の電気料金より『5%割引を保障』するサービスを展開しています。

注目される新エネルギーとは

新エネルギーには太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電などがあります。

新エネルギーは二酸化炭素(CO2)の排出が少ないことからクリーンなエネルギーと言われ地球温暖化防止にも貢献するメリットがあります。

自然をエネルギーとするため無限に利用できることから再生可能エネルギーと呼ばれて注目をあび今後日本でも普及していくエネルギーとなっていくはずです。

しかし再生可能エネルギーは発電コストが高く自然条件よって発電量が左右されるため不安定で、設置できる場所も限られてしまいます。

新エネルギーの普及には様々な課題がありますがそれぞれの特徴を活かした分散型の電源として普及が期待されています。

まとめ

2016年4月からは特定規模電気事業者であっても小売電気事業者のライセンス制が導入され電力供給量の確保など様々な要件を満たさなければ登録ができなくなるため、新電力事業のハードルが上がり登録だけで新規参入をした事業者は稼働ができず撤退する可能性が高まります。

新電力事業ではさらに競争が激しくなり、生き残れるのはやはりエネルギー関連企業や既存のサービスとの併用による割引や、自前の発電設備などの先行投資を行えるだけの経営基盤を有した大企業になるでしょう。

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