
国の防災基本計画は、防災を災害予防・災害応急対策・災害復旧と復興の3段階で捉えています。
非常用電源は予防の段階で準備し、応急対策の段階で業務を支える設備です。
選び方の起点は、停電中も動かしたい機器とその時間を先に書き出すことにあります。
種類ごとに得意な停電の長さと苦手な条件があるため、一つで全てを賄うより役割を分けて組み合わせるほうが無理のない計画になります。
📌 この記事でわかること
- 1
法人向けの非常用電源には、ポータブル電源・発電機・産業用蓄電池・UPSの4種類があります。持ち運べるか、燃料を使うか、瞬断を防げるかの違いで選び分けます。
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非常用電源の必要容量は、消費電力(W)×使用時間(h)を機器ごとに合計して求めます。100Wの機器を8時間使う場合は800Whです。
詳しく見る → - 3
長時間の停電には、燃料を補給すれば動き続ける発電機が向いています。屋内での静かな給電やピークカットなど平常時の活用には蓄電池が向いています。
詳しく見る → - 4
UPS(無停電電源装置)は、停電直後の瞬断を防ぐための装置です。長時間の停電に備えるには、UPSに蓄電池や発電機を組み合わせる構成が必要です。
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建物の配線に接続する産業用蓄電池や太陽光、常設の発電設備の工事は、電気工事士法に基づき資格を持つ者が行う必要があります。
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📑 この記事の内容
3. 容量を詰めて導入に備える
企業のBCP対策に非常用電源が必要な理由|停電時に止まる業務と設備🔗

定義:BCPにおける電源確保とは、停電中も中核業務を続けるために代わりの電力を用意しておく取り組みのことです。
結論:非常用電源の要否は、停電で止まる業務と許容できる停止時間を書き出して判断するものです。
- 要点1:停電が起きると事業所では通信機器・照明・空調・サーバー・冷蔵設備が同時に止まります。
- 要点2:業務ごとの停止許容時間が短いほど非常用電源を用意する必要性は高まります。
- 要点3:早期復旧を前提に非常用電源を省く判断は、停止許容時間を確かめてから行います。
防災基本計画では、防災を時間の経過に沿って災害予防・災害応急対策・災害復旧と復興の段階に分け、さまざまな対策を組み合わせて備える考え方を示しています。電源の確保はこのうち予防の段階で準備し、発災直後の応急対策で使う備えにあたります。発災してから機器や燃料を探し始めても調達は難しくなるため、平常時に準備を終えておくことが前提になります。
(出典:防災基本計画|政府機関(.go.jp), 2022)
停電が起きると、事業所では複数の設備が同時に止まります。安否確認や取引先との連絡に使う通信機器、状況を把握するためのパソコンやテレビ、避難や作業に欠かせない照明が代表例です。空調が止まれば室温を保てず、冷蔵・冷凍設備では保管品の品質に影響が出ます。サーバーは電源が途切れた瞬間にデータが壊れる恐れがあるため、ほかの機器とは別の対策が要ります。
| 停電で止まる設備 | 主な影響 | 求められる電源の性質 |
|---|---|---|
| 通信機器・スマートフォン | 安否確認や連絡ができない | 小さな出力で長く給電できること |
| 照明 | 避難や作業の安全を保てない | 夜間を通して給電できること |
| 空調 | 室温を保てず人や機器に負担がかかる | 大きな出力に対応できること |
| サーバー・パソコン | データの破損や業務の停止 | 途切れずに切り替わること |
| 冷蔵・冷凍設備 | 保管品の品質が落ちる | 連続して運転できること |
一方で、非常用電源は不要という考え方もあります。停電が短時間で復旧すれば、備えた設備を使わないまま終わる可能性があるためです。この見方が成り立つかどうかは、業務ごとの停止許容時間で決まります。数時間止まっても再開できる業務なら簡易な備えで足り、数分の停止で損失が出る業務には専用の電源が必要です。復旧までの時間は地域や被害の規模に左右されるため、楽観的な前提だけで判断しないようにしてください。
🔴 重要
停電時に動かす機器の一覧と停止許容時間が無いまま機種を選ぶと、容量不足や過剰な投資につながります。機種の比較より先に一覧づくりを済ませてください。
要否の判断は、停電時に動かす機器を一覧にし、それぞれの停止許容時間を書き添えるところから始まります。一覧に機器名・設置場所・担当部署を並べておくと、後の容量計算や設置場所の検討にそのまま使えます。全社を一度に整理する必要はありません。本社や主要拠点の中核業務から手をつければ十分です。
ポイントは、機種を比べる前に停電時に動かす機器と停止許容時間を一覧にしておくことですね。この一覧が後の容量計算の土台になります。
非常用電源の種類の比較|ポータブル電源・発電機・産業用蓄電池・UPSの違い🔗

定義:非常用電源とは、電力会社からの送電が止まったときに代わりに電力を供給する機器や設備の総称です。
結論:非常用電源の種類は、持ち運べるか・燃料を使うか・瞬断を防げるかの違いで選び分けます。
- 要点1:ポータブル電源は充電式の電池を内蔵し、屋内でも静かに使える可搬型の非常用電源です。
- 要点2:発電機は燃料を補給すれば長時間動かせる一方、排ガスが出るため屋外で使う機器です。
- 要点3:UPSは停電直後の瞬断を防ぐ装置であり、長時間の給電を目的とした機器ではありません。
法人で候補になりやすい非常用電源は、ポータブル電源・発電機・産業用蓄電池・UPSの4種類です。ポータブル電源とは、充電した電池からコンセントの形で給電できる持ち運び型の機器を指します。種類ごとに得意な停電の長さや使える場所が異なります。どの種類が優れているかではなく、どの場面を任せるかで選ぶと整理しやすくなります。
非常用電源4種類の比較
| 種類 | 電力の源 | 使える場所 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| ポータブル電源 | 充電した電池 | 屋内・屋外 | 通信機器・照明・小型機器 |
| 発電機 | ガソリン・カセットボンベ・LPガス | 屋外のみ | 長時間の照明・工具・屋外作業 |
| 産業用蓄電池 | 建物に据え付けた大容量の電池 | 設置場所に固定 | 建物内の特定回路への給電 |
| UPS | 内蔵の電池 | 対象機器のそば | サーバー・ネットワーク機器の瞬断対策 |
種類を絞り込むための確認項目
- 屋内で使う必要があるか(排ガスの出る発電機は屋内で使えない)
- 停電がどれくらい続く想定か(燃料を補給できるかで長時間への対応力が変わる)
- 瞬断が許されない機器があるか(サーバーにはUPSが前提になる)
- 拠点間で持ち運ぶ必要があるか(可搬型か定置型かが決まる)
ポータブル電源と発電機の大きな違いは、燃料の有無と使える場所にあります。発電機はエンジンで発電するため、燃料を足せば運転を続けられます。ただし排ガスに一酸化炭素が含まれ、室内で使うことはできません。ポータブル電源は排ガスがなく屋内で使える反面、電池が空になると充電し直すまで給電が止まります。保守では、発電機に試運転と燃料の入れ替え、ポータブル電源に定期的な充電が必要です。
産業用蓄電池は建物に据え付ける大容量の電池で、停電時に自動で給電を切り替える自立運転に対応した機種があります。自立運転は、送電が止まった状態でも蓄電池や太陽光の電力で建物内の回路へ給電する運転方式です。UPS(無停電電源装置)は、停電の瞬間に内蔵電池へ切り替えて電圧の途切れを防ぎます。給電できる時間は限られるため、サーバーを安全に停止させる時間を確保する装置と捉えてください。
⚠️ 注意
発電機を屋内や車庫・倉庫の中で運転すると、排ガスがこもって一酸化炭素中毒を招く危険があります。必ず屋外の風通しのよい場所で使ってください。
UPSを長時間の非常用電源と考えるのは誤りで、役割は停電直後の切り替えの間をつなぐことにあります。長い停電に備えるには、UPSの後ろに蓄電池や発電機を組み合わせる構成が必要になります。種類の選択は性能の優劣ではありません。どの停電シーンを担当させるかの割り振りとして考えると、過不足のない構成に近づきます。
ここ大事なんですけど、UPSは長時間用の電源ではなく、停電直後の切り替えの間をつなぐ装置なんですよ。
蓄電池と発電機の比較|稼働時間・燃料・保守性の違いと選び分け🔗

定義:燃料補給型の電源とは、発電機のように燃料を足すことで運転を続けられる電源のことです。
結論:長時間の停電には発電機が向き、屋内での静かな給電と平常時の活用には蓄電池が向いています。
- 要点1:発電機の稼働時間は燃料の備蓄量と補給体制によって決まります。
- 要点2:蓄電池の稼働時間は電池の容量で決まり、充電手段がなければ使い切った時点で止まります。
- 要点3:ガソリンを40リットル以上保管する場合は、市町村の火災予防条例に基づく届出が必要です。
長時間の停電に備える場合、候補は発電機と蓄電池の二つに絞られます。発電機は燃料を補給する限り動き続ける燃料補給型、蓄電池はためた電力を使い切るまで給電する蓄電型です。建物に常設して停電時に自動で起動する発電設備は非常用自家発電設備と呼ばれ、可搬型の発電機とは別に計画します。
水道施設を対象にした研究では、72時間の電源確保を目標とする大容量非常用発電設備の検討が報告されています。数日単位の停電を想定する設備では、燃料補給型が備えの中心になるという見方です。
(出典:大容量非常用発電設備の検討 -72時間の電源確保に向けて-|小坂 直人, 2025)
| 比較項目 | 発電機 | 蓄電池 |
|---|---|---|
| 稼働時間を決めるもの | 燃料の備蓄量と補給体制 | 電池の容量と充電手段 |
| 使える場所 | 屋外のみ(排ガスが出るため) | 屋内でも使える |
| 騒音・排気 | エンジン音と排ガスがある | ほとんどない |
| 平常時の活用 | 試運転以外は使わない | ピークカットや自家消費に使える |
| 主な保守 | 試運転・燃料の入れ替え・オイル交換 | 残量の管理・電池の劣化確認 |
発電機の燃料にはガソリン・カセットボンベ・LPガスがあり、カセットボンベとガソリンを切り替えて使える兼用型もあります。ガソリンは消防法上の危険物で、ポリタンクには入れられず金属製の携行缶で保管します。指定数量200リットルの5分の1にあたる40リットル以上を保管する場合は、所在地の市町村の火災予防条例に基づく届出が必要です。時間がたつと品質が落ちるため、入れ替えの手順も決めておきます。
数字で押さえる非常用電源の目安
蓄電池を選ぶ場合は電池の種類も確かめます。リン酸鉄リチウムイオン電池は正極にリン酸鉄リチウムを使う電池で、熱に対して安定しやすく繰り返しの使用に強い傾向があります。寿命の目安となる充放電サイクルは、満充電から使い切るまでを1回と数えた回数で、仕様書で確認できます。平常時に毎日充放電する使い方なら、この回数の確認が欠かせません。
停電が長引きやすい拠点や、屋外で大きな出力が要る作業には発電機が向いています。屋内での給電や騒音を避けたい環境では蓄電池が適しています。蓄電池は使用電力の多い時間帯に放電して最大需要電力を抑えるピークカットや、太陽光の電力をためる自家消費にも使えます。防災専用の設備にとどまらない点が、発電機との大きな違いです。
💡 ポイント
発電機と蓄電池は二者択一ではありません。瞬断対策はUPS、数時間の屋内給電は蓄電池、長時間は発電機と役割を分ける構成も選択肢になります。
発電機か蓄電池かは、想定する停電の長さと燃料を管理し続けられる体制の有無で選び分けると判断しやすくなります。燃料の入れ替えや試運転を担える人がいない事業所では、発電機を置いても有事に動かない恐れがあります。保守の担い手まで含めて比べることが、選定の失敗を防ぐ近道と言えます。
蓄電池を防災に使う際の容量の考え方や基本的な選び方は、次の記事で整理しています。
蓄電池防災とは?法人BCPで備える停電対策・容量・選び方の基本
補足すると、発電機を選ぶなら燃料の入れ替えや試運転を誰が担うかまで、導入前に決めておくのがよいと思います。
LED照明の導入やエネルギーコストの見直しで迷ったら、照明の専門家に無料でご相談
➤無料で見積り・相談する太陽光発電・V2Hと組み合わせた電源確保の比較|平常時の省エネと非常時の自立運転🔗

定義:V2Hとは、電気自動車の電池にためた電力を建物へ送って使う仕組みのことです。
結論:太陽光発電と蓄電池を組み合わせると、停電が長引いても日中に充電し直せるため給電を続けやすくなります。
- 要点1:太陽光発電を単体で導入した場合、夜間や悪天候の停電時には電力を使えません。
- 要点2:社用車の電気自動車をV2Hで電源にするには、対応する車両と充放電設備が必要です。
- 要点3:系統連系を伴う太陽光や蓄電池の工事は、電気工事士など専門家への相談が必要です。
太陽光発電を備えた事業所では、停電時にパワーコンディショナを自立運転に切り替えると、発電した電力を建物内で使えます。パワーコンディショナとは、太陽光パネルが生む直流の電力を建物で使える交流に変える機器です。ただし単体では発電している時間しか給電できず、夜間や雨天の停電には対応できません。切り替えの方法や使える回路は機種で異なるため、事前の確認が欠かせません。
この弱点を補うのが太陽光発電と蓄電池の組み合わせです。日中の余った電力を蓄電池にため、夜間に放電すれば、停電が数日に及んでも晴れ間があれば充電し直せます。平常時は太陽光の電力を自家消費し、電力会社から買う電力量を抑えられます。防災設備でありながらエネルギーコストの見直しにも役立つ点が、単体導入との違いです。削減額は設備の容量や使い方によって変わります。
| 構成 | 停電時の給電 | 平常時のエネルギーコスト |
|---|---|---|
| 太陽光発電のみ | 日中の発電中に限られる | 自家消費で購入電力を抑えられる |
| 蓄電池のみ | 容量を使い切るまで | ピークカットに活用できる |
| 太陽光発電+蓄電池 | 日中に充電して夜間も給電できる | 自家消費とピークカットを両立できる |
| V2H(+太陽光発電) | 車両の電池容量の範囲で給電できる | 車両の充電を太陽光で賄える |
社用車に電気自動車(EV)を使っている場合は、V2Hで車両の電池を非常用電源として活かせます。車両は移動できるため、被害の少ない拠点で充電してから戻る運用も考えられます。導入には対応する車種と充放電設備が必要です。営業などで車両が出払っている時間帯は給電できないため、停電時に車両を事業所へ戻す運用ルールもあわせて決めておきます。
持ち運べる可搬型ソーラーパネルは、ポータブル電源を充電する手段として役立ちます。一方で出力は小さく天候にも左右されるため、事業所全体の電源を担う設備にはなりません。通信機器や照明の電源を長く保つための補助として位置づけるのが現実的です。
📝 補足
自立運転で給電できる範囲は、設計によって専用コンセントや特定の回路に限られます。停電時にどの機器へ給電するかは、導入前の設計段階で決めておいてください。
太陽光や蓄電池を電力会社の送電網とつなぐ系統連系の工事は、電気工事士など専門家に相談したうえで計画してください。既設の太陽光に蓄電池を後から加える場合も、パワーコンディショナとの適合を確かめる必要があります。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせて事業所の電源を自立させた事例は、次の記事で紹介しています。
よく聞かれるんですが、既設の太陽光に蓄電池を足す場合は、パワーコンディショナとの適合を先に確かめてみてください。
非常用電源の選び方|消費電力・起動電力・容量・設置場所の比較ポイント🔗

定義:非常用電源の必要容量とは、停電中に動かす機器の消費電力と使用時間を掛け合わせた電力量のことです。
結論:非常用電源の容量は、動かす機器の消費電力と使用時間から必要なWhを計算して決めます。
- 要点1:必要容量は消費電力(W)と使用時間(h)を掛けた値を機器ごとに合計して求めます。
- 要点2:モーターを使う機器は起動時に定格を上回る電力を必要とするため、出力に余裕が要ります。
- 要点3:非常用電源の費用は本体・工事・保守・更新を含めた総額で比べます。
選定の出発点は、停電中に動かす機器の洗い出しと優先順位づけです。先に作った機器の一覧に、各機器の消費電力(W)と停電中に使いたい時間を書き加えます。消費電力は機器の銘板や取扱説明書で確かめられます。優先順位は安否確認や情報収集に使う通信機器を最上位に置き、照明と業務継続に必要な機器を続けて並べると整理しやすくなります。
必要な容量は消費電力×使用時間で求めます。たとえば消費電力100Wの機器を8時間使うなら800Whです。これを機器ごとに合計した値が、非常用電源に求める容量の目安になります。照明や通信機器のように消費電力の小さい機器でも、使う時間が長ければ必要な容量は大きくなります。
「1000Wのポータブル電源で何時間使えるか」という疑問では、1000Wが出力の上限を示す数字である点に注意が必要です。使える時間を決めるのは容量(Wh)のほうです。容量1000Whの機種で100Wの機器を動かす場合、計算上の目安は10時間になります。実際には電力を変換する際のロスがあるため、使える時間は計算値より短くなります。
必要容量と出力を決める流れ
- 動かす機器を書き出す
停電中に使う機器を一覧にし、通信機器・照明・業務継続に必要な機器の順に優先順位を付けます。 - 消費電力と使用時間を確かめる
銘板や取扱説明書で消費電力(W)を確認し、停電中に使いたい時間(h)を書き加えます。 - 必要容量(Wh)を合計する
機器ごとに消費電力×使用時間を計算して合計します。100Wの機器を8時間使うなら800Whです。 - 起動電力と出力を照らし合わせる
モーターを使う機器の起動電力を、非常用電源の定格出力が上回っているかを確認します。 - 余裕を持たせて機種を絞る
変換ロスを見込んで容量に余裕を持たせ、設置場所と総額も含めて候補を比べます。
- 停電中に動かす機器と優先順位を一覧にしておくことが必要です
- 機器ごとの消費電力と使用時間から必要容量(Wh)を計算して合計します
- モーターを使う機器の起動電力を非常用電源の定格出力が上回っていることを確認します
- 非常用電源は屋内・屋外・拠点数に合った設置形態を選びます
- 非常用電源の費用は本体・工事・保守・更新を含めた総額で比べます
見落とされやすいのが起動電力です。冷蔵庫やポンプ、空調などモーターを使う機器は、電源を入れた瞬間に定格消費電力を上回る電力を必要とします。非常用電源の定格出力が起動電力を下回ると、容量が足りていても機器は動きません。複数の機器を同時に起動しない運用ルールを決めておくことも、出力不足を防ぐ方法の一つです。
設置場所によっても選択肢は変わります。屋内の事務所や倉庫では排ガスの出ない蓄電池やポータブル電源、屋外に十分な空間がある工場では発電機が候補になります。拠点が複数ある場合は、各拠点に小型の電源を置くか主要拠点に大型の電源を集めるかを比べます。並列運転に対応した機種なら、同じ機種をつないで出力を高められるため段階的な拡張も可能です。
⚠️ 注意
カタログの容量をすべて使える前提で計算すると、停電中に想定より早く電力が尽きます。計算した必要容量には余裕を持たせて機種を選んでください。
非常用電源の費用は、本体価格に工事費・保守費・更新費を加えた総額で比べると判断を誤りにくくなります。蓄電池には電池の劣化に応じた更新時期が来るため、寿命の目安も総額に含めて考えます。発電機では燃料の入れ替えや点検の費用が継続して発生します。
平常時の電気代がどこで膨らんでいるかを把握しておくと、蓄電池をピークカットにも使うかどうかの判断材料になります。原因の確かめ方は次の記事で解説しています。
意外と見落としがちですが、容量が足りていても、モーター機器は起動電力に出力が追いつかず動かないことがあるかもしれません。
非常用電源の導入時の注意点|法規制・保守体制・補助金の確認🔗
定義:非常用電源の運用ルールとは、点検・充電・燃料管理の担当と頻度をあらかじめ決めた社内の取り決めのことです。
結論:非常用電源は、導入前に法規制と補助金を確認し、導入後は点検の担当と頻度を決めて運用します。
- 要点1:建物の配線に接続する非常用電源の工事は、電気工事士の資格を持つ者が行う必要があります。
- 要点2:蓄電池や発電機の定期的な保守と点検は、停電時に確実に動かすための前提になります。
- 要点3:蓄電池などの補助金は年度ごとに内容が変わるため、最新情報を公式サイトで確認します。
導入時に確かめる点は、選んだ電源の種類によって異なります。持ち運び型のポータブル電源は工事が要らず、手続きの負担が小さい選択肢です。建物の配線に接続する産業用蓄電池や太陽光、常設の発電設備は、電気工事士法に基づき資格を持つ者が工事を行う必要があります。出力の大きな設備では電気事業法や消防法が関わる場合もあるため、計画の早い段階で専門家に相談してください。
| 確認項目 | 可搬型(ポータブル電源・可搬型発電機) | 定置型(産業用蓄電池・太陽光・常設の発電設備) |
|---|---|---|
| 工事・手続き | 原則として不要 | 電気工事士による工事が必要 |
| 法規制の確認 | 発電機の燃料の保管量 | 電気事業法・消防法などの確認が必要な場合がある |
| 保守の中心 | 充電・試運転・燃料の入れ替え | 定期点検・電池の劣化確認 |
| 導入までの期間 | 購入後すぐに使える | 設計と工事の期間が必要 |
総務省の放送設備に関する報告書では、停電対策として受電設備や自家用発電機・蓄電池の定期保守・点検を行うことが示されています。故障や異常を自動で検出して通報する仕組みで動作を確かめる方法も挙げられています。点検の担当者と頻度、電池の残量や劣化の確かめ方、燃料の入れ替え時期を社内ルールとして文書にしておきます。
(出典:放送設備安全信頼性検討作業班1 報告書(案)|政府機関(.go.jp), 2024)
非常用電源の点検項目は、BCPの訓練計画と点検チェックリストに組み込むことで形だけの備えになるのを防げます。定期的な訓練で実際に電源を起動し、優先順位どおりに給電できるかを確かめると、配線の不足や容量の見込み違いに早く気づけます。担当者が異動しても手順を引き継げるよう、写真付きの手順書を残しておくと安心です。
蓄電池や太陽光などの導入には、国や自治体の補助金・助成金が用意される場合があります。対象設備や要件、公募の時期は年度ごとに変わり、交付決定の前に発注した設備を対象外とする制度もあります。最新情報は各制度の公式サイトで確認してください。採択は審査で決まるため、補助金を受けられなかった場合の資金計画もあわせて立てておきます。
💡 ポイント
工事不要の可搬型から始めて定置型へ広げる段階的な導入なら、初期の負担を抑えながら備えを厚くできます。最初は通信機器と照明を賄える容量から検討してください。
当面の備えを急ぐ場合は可搬型から始め、平常時の省エネまで見込む場合は定置型を計画的に導入する、という段階的な進め方も選択肢です。エネプラは、メーカーを横断した商品選定と250件以上の施工実績をもとに、機種選びから工事・補助金申請のサポート・保守までワンストップで支援しています。自社に合う構成を整理したい場合は、無料省エネ診断をご活用ください。
非常用電源の導入を、電気代を含むエネルギーコスト全体の見直しと合わせて進めたい場合は、次の記事の手順が参考になります。
停電対策を形にする3ステップ
非常用電源は、機器の一覧と容量計算を先に済ませ、停電の場面ごとに種類を割り振ります。導入後の点検と訓練まで決めておくことで、有事に確実に動く備えになります。
- まず停電中に動かす機器と停止許容時間を一覧にしてください。そのうえで消費電力・使用時間・起動電力から必要な容量と出力を計算してください。
- 瞬断対策はUPS、屋内の給電は蓄電池、長時間の停電は発電機と役割を割り振ってください。費用は本体・工事・保守・更新を含めた総額で比べてください。
- 導入後は点検・充電・燃料管理の担当と頻度を文書で決めてください。BCP訓練では実際に電源を起動し、給電できるかを確かめてください。
よくある質問
よくある質問について:実務で直面しやすい疑問や判断に迷いやすいポイントを中心に、読者から多く寄せられる質問を観点別に整理しました。本文と併せてチェックリストとして活用してください。
ポータブル電源と発電機はどちらを先に用意すべきですか?
屋内で通信機器や照明を動かす場面が多い事業所は、排ガスが出ず工事も不要なポータブル電源から始めると導入しやすいです。数日単位の停電や屋外作業に備える場合は、燃料の保管と試運転の体制を整えたうえで発電機を加えてください。
容量1000Whのポータブル電源で何時間使えますか?
使える時間は容量を消費電力で割って求めます。100Wの機器なら約10時間、50Wなら約20時間が計算上の目安です。実際は電力変換のロスで計算値より短くなるため、必要容量には余裕を持たせて機種を選んでください。
UPSだけで停電対策は足りますか?
UPSは停電の瞬間に内蔵電池へ切り替え、サーバーを安全に停止させる時間を確保する装置で、長時間の給電には向きません。停電が長引く想定なら、UPSの後ろに蓄電池や発電機を組み合わせる構成を検討してください。
発電機用のガソリンを備蓄するときの注意点は?
ガソリンは消防法上の危険物で、ポリタンクではなく金属製の携行缶で保管します。指定数量200リットルの5分の1にあたる40リットル以上を保管する場合は、市町村の火災予防条例に基づく届出が必要です。品質が落ちるため定期的に入れ替えてください。
この記事を読んだ方がよく検索する質問
非常用電源の導入に使える補助金はありますか?
蓄電池や太陽光などには国や自治体の補助金が用意される場合があります。要件や公募時期は年度ごとに変わり、交付決定前の発注が対象外になる制度もあるため、計画段階で各制度の公式サイトを確認し、スケジュールを逆算して準備を進めてください。
非常用電源の点検はどう進めればよいですか?
点検の頻度は機種の取扱説明書やメーカーの推奨に従って決め、担当者と時期を社内ルールとして文書にします。BCP訓練で実際に起動し、優先順位どおり給電できるかを確かめると、配線の不足や容量の見込み違いにも早く気づけます。
自社に合う非常用電源の構成は誰に相談すればよいですか?
建物の配線に接続する蓄電池や太陽光の工事には電気工事士の資格が必要なため、施工まで対応できる専門業者への相談が近道です。停電時に動かす機器の一覧と使用時間を用意して相談すると、容量や構成の提案を具体的に受けられます。
参考文献
参考情報について:本記事の信頼性を担保するため、公的統計・学術論文・業界専門媒体を中心に、複数の一次情報源を参照しました。各出典は執筆時点で確認できる最新情報に基づいています。
- 防災基本計画|政府機関(.go.jp), 2022
- 大容量非常用発電設備の検討 -72時間の電源確保に向けて-|小坂 直人, 2025
- 放送設備安全信頼性検討作業班1 報告書(案)|政府機関(.go.jp), 2024
- 密集市街地整備を契機とした太陽電池・蓄電池導入のあり方に関する研究|Takuro Arai, 2024
- TOKYO強靭化プロジェクト|Takahiro OTANI, 2024
- 実践・備え・抗議:ノルウェー農村世帯における停電 (原題: Practices, provision and protest: Power outages in rural Norwegian households)|U Wethal, 2023
- 太陽光・風力・バックアップ蓄電を統合したハイブリッド再生可能エネルギーシステムのエネルギー管理における多目的最適化とアルゴリズム評価 (原題: Multi-objective optimization and algorithmic evaluation for EMS in a HRES integrating PV, wind, and backup storage)|AA Shaier他, 2025
- ミャンマー・ヤンゴンの世帯レベルにおける防災の備えとレジリエンス (原題: Disaster preparedness and resilience at household level in Yangon, Myanmar)|SB Heinkel他, 2022
- 複合電源システムの水道施設への導入検証|野口 侑樹, 2020
- 非常時の滞留者受入体制を踏まえた優先的熱供給に関する研究―みなとみらい 21 地区を対象として―|石井美緒, 2025
- 非常時 EV 電力輸送支援が可能な非絶縁双方向直流電力変換器連係住宅用 PV-PCS 電力供給システムに関する研究|藤清高, 2016
- 地震災害におけるライフラインの機能的被害・復旧予測手法の開発|加藤宏紀, 2020
- 東日本大震災の経験に基づく生活支障の定量的評価|佐藤真吾, 村尾修, 2019
- BCM. BCPにおける電源設備|政府機関(.go.jp), 2007
この記事の監修者

味生 豊
aOn株式会社 代表取締役/照明士・照明コンサルタント/第一種電気工事士・電気工事施工管理技士
建設業の電気通信分野で西日本全域250件以上の電波対策工事に従事後、2015年にエネプラを立ち上げ。法人向けLED照明工事の施工管理を年間30件以上担当する。相談に応えるため照明士・照明コンサルタントを取得し、施設照明の設計を専門とする。第一種電気工事士・二級電気工事施工管理技士として官公庁工事約30件を落札、主任技術者として現場を統括した。











