
稟議書を前にして、費用に見合う働きをするのか、使われないまま棚で眠らないかと手が止まる場面は珍しくありません。
お悩みになるのも分かります。
先にお伝えすると、ポータブル電源はすべての事業所に必須の設備ではありません。
停電中も動かしたい通信機器や照明があり、数時間から数日の停電を想定する事業所では有効な備えになります。
内閣府の防災基本計画も非常電源用燃料の備蓄充実を掲げており、電源の確保は防災計画の柱の一つです。
不要論も含めて、企業規模と用途から必要性を判断する手順を整理します。
📌 この記事でわかること
- 1
ポータブル電源はすべての事業所に必須の防災設備ではありません。停電中も動かしたい通信機器や照明があり、数時間から数日の停電を想定する事業所では有効な備えになります。
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ポータブル電源の不要論は、非常用発電機と燃料を備えている事業所や、停電時に営業を止めても損失が小さい事業所では妥当な判断です。
詳しく見る → - 3
停電時の事業所でポータブル電源が対応しやすいのは、スマートフォン・無線機・LED照明・ラジオなど、通信・照明・情報収集に使う消費電力の小さな機器です。
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企業規模別に見たポータブル電源の必要性は、従業員数ではなく、停電中に動かす機器の数と消費電力で判断します。
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防災用ポータブル電源の必要容量は、消費電力に使用時間を掛けて求めます。計50Wの機器を8時間使う場合は400Whに、変換時の目減り分を上乗せします。
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📑 この記事の内容
ポータブル電源は防災に必要か、事業所で判断が分かれる理由🔗
定義:ポータブル電源とは、充電式の大容量電池と交流出力を一体化し、コンセントのない場所でも電気機器を動かせる持ち運び型の電源装置のことです。
結論:事業所でのポータブル電源の必要性は、停電中に動かしたい機器と想定する停電時間によって決まります。
- 要点1:ポータブル電源はモバイルバッテリーより容量と出力が大きく、コンセント形の出力口を備える製品が多いです。
- 要点2:事業所の停電対策でポータブル電源が担うのは、選んだ機器へ限られた時間だけ電気を送る役割です。
- 要点3:ポータブル電源の導入判断が分かれる背景には、費用対効果・使用頻度・保管負担の見えにくさがあります。
まず確認したいのは、判断が分かれる原因が製品の性能ではなく事業所側の前提にある点です。ポータブル電源は置くだけでは役に立たず、どの機器を何時間動かすかが決まって初めて価値が見えてきます。費用対効果が読めない、年に何度使うか分からない、保管や充電の手間が増える。こうした迷いは前提が曖昧なまま検討を始めたときに生まれやすいものです。判断の土台は三段階で整えられます。
最初に押さえておきたいのが、ポータブル電源の位置づけです。内部にリチウムイオン電池とインバーターを備えた装置で、インバーターとは電池の直流を家庭用コンセントと同じ交流に変える部品を指します。建物の配線にはつながず、機器を差し込んで使う点が特徴です。非常用電源の一種ではあるものの、建物全体へ電気を送る設備とは役割が異なります。
次に検討したいのが、手元にあるモバイルバッテリーとの違いです。容量はWh(ワット時)、出力はW(ワット)で表します。前者は貯めておける電気の量、後者は一度に送り出せる電気の大きさを示す単位です。モバイルバッテリーはUSB出力が中心ですが、ポータブル電源はAC出力を備え、ノートPCや照明器具、小型の家電までまかなえる製品があります。

モバイルバッテリーとポータブル電源の違い
| 項目 | モバイルバッテリー | ポータブル電源 |
|---|---|---|
| 主な出力口 | USBが中心 | AC(コンセント形)・USB・DCなど |
| 動かせる機器 | スマートフォン・タブレットの充電 | ノートPC・照明・通信機器・小型家電 |
| 持ち運び | 鞄に入る大きさ | 据え置きに近い重量の製品もある |
| 管理の方法 | 個人での管理が中心 | 置き場所と充電担当を決めて管理 |
そして最後に、事業所の停電対策の中で担わせる役割を整理します。ポータブル電源は建物を丸ごと支える設備ではなく、選んだ機器へ限られた時間だけ電気を送る道具として位置づけると判断がぶれにくくなります。この線引きを社内で共有しておけば、過大な期待も的外れな反対も起きにくくなります。
💡 ポイント
検討の初期段階では製品カタログを見比べるより、停電中に動かしたい機器名を書き出すほうが判断は早く進みます。容量や価格の比較はその後で十分です。
役割を絞り込むと、次に気になるのは「そもそも使う場面があるのか」という疑問ではないでしょうか。インターネット上で目にする不要論には、事業所の実情に照らして納得できる部分も含まれています。次のセクションでは、その意見を正面から取り上げます。
ポイントは、製品を比べる前に「停電中に何を動かすか」を決めることです。そこが定まれば、必要かどうかの答えはおのずと見えてきますね。
「ポータブル電源はいらない」という意見にも一理ある理由🔗
定義:ポータブル電源の不要論とは、停電の短さや管理負担を理由に、防災目的での購入を見送る考え方のことです。
結論:ポータブル電源の不要論は、停電の影響が小さく代替手段がある事業所では妥当な判断になります。
- 要点1:停電は短時間で復旧するという見方は、停電が長引いた災害事例があるため一律には当てはまりません。
- 要点2:充電や点検の担当者が決まっていないポータブル電源は、停電時に残量不足で使えないおそれがあります。
- 要点3:リチウムイオン電池を使う製品は、高温を避けた保管と廃棄時の適切な処理が求められます。
ポータブル電源は本当に買ってはいけないものなのでしょうか。インターネット上には「停電はすぐ復旧する」「買っても使わずに後悔した」「処分が面倒」「電源のいらない暖房で足りる」といった声が並び、買ってはいけない理由として紹介されることもあります。予算を預かる立場からすると、無視できない指摘です。
ここで最も重要なのは、こうした意見の多くが家庭での使い方を前提にしている点です。事業所に置き換えると、一理ある部分と当てはまらない部分に分かれます。保管・定期充電・廃棄の負担は、担当者が決まらない職場ではむしろ家庭より重くなりがちです。廃棄時も購入先や自治体の案内に沿った処理が求められます。一方で停電の短さについては、地域や災害の種類で前提が大きく変わります。
停電がすぐ終わるとは限らない点は、公的資料からも読み取れます。内閣府の防災啓発サイト「一日前プロジェクト」には、台風と地震で停電が長引き、冷凍庫の中身に数日悩んだ体験が紹介されています。数日に及ぶ停電はまれだという声がある一方で、長期化した事例は実際に記録されています。
具体的には、2018年の台風24号で静岡県西部に大規模停電が起き、地域の医療機関の被害状況と対応が論文にまとめられています。令和6年能登半島地震でも、町丁・大字単位で停電の広がりを可視化する研究が進められました。停電の長さは事前に選べません。不要論が自社に当てはまるかどうかは、業務が電気なしでどこまで持ちこたえられるかで見極めると整理しやすくなります。

(出典:停電履歴情報を用いた令和6年能登半島地震による町丁・大字単位の停電GISデータの作成|Kenji Sugimoto, 2026)
⚠️ 注意
消費者庁はリチウムイオン電池使用製品の発火事故について注意喚起を続けており、強い衝撃を与えない、高温になる場所で使用や保管をしないといった点を挙げています。倉庫の奥や夏場の車内に置きっぱなしにする保管は避けてください。
(出典:リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう|政府機関(.go.jp), 2025)
不要論が当てはまりやすいのは、すでに非常用発電機と燃料を備えている事業所です。停電時は営業を止めても損失が小さく、従業員の帰宅も容易な職場も同様と考えられます。反対に、停電中も連絡や記録を止められない職場では検討の余地が残ります。その分かれ目は、停電時に電気が必要になる場面を具体的に並べると見えてきます。
不要論が当てはまりやすい事業所のチェック
- 非常用発電機と燃料をすでに備えている
- 停電時に営業を止めても損失が小さい
- 従業員が停電時でも容易に帰宅できる
- 停電中に続けるべき連絡・記録業務がない
- 充電や点検を担う担当者を置く余裕がない
不要論の論点と法人が判断する基準は、以下の記事でも整理しています。
ポータブル電源は災害にいらない?法人が判断する基準と蓄電池の違い
ここ大事なんですけど、不要論が当てはまるかは業務が電気なしでどこまで持ちこたえられるか次第です。充電担当まで決められるかも、購入を判断する材料なんですよ。
停電時に事業所で電源が必要になる場面🔗

定義:停電時の事業所の電源需要とは、通信・照明・温度管理・保冷・情報収集のために停電中も電気を必要とする場面のことです。
結論:事業所で停電時に電源が必要になる場面は、人の安全確保と業務の記録・保管に集中します。
- 要点1:安否確認と情報収集に使うスマートフォン・無線機・PCは、停電時の電源確保で優先度が高い機器です。
- 要点2:停電中の暑さ寒さ対策は、従業員や来訪者を事業所で待機させる場合に健康上の課題になります。
- 要点3:冷蔵が必要な食品・医薬品・検体を扱う事業所では、保冷用の電源が損失の大きさを左右します。
見落とされやすいのは、停電時に困るのはパソコン作業の中断だけではないという点です。従業員の安否確認や来訪者の避難誘導、暑さ寒さへの対応、冷蔵品の保管まで、人の安全と業務の記録・保管の両面で電気は使われています。場面ごとに必要な機器を書き出すと、ポータブル電源で足りる範囲と足りない範囲が見えてきます。
最初に挙がるのが通信と照明です。スマートフォンや無線機、PCは安否確認や取引先への連絡に欠かせず、充電が切れると情報が途絶えます。夜間や窓のない区画では、照明がなければ避難誘導そのものが難しくなります。テレビやラジオで災害情報を把握する手段も、乾電池だけでは長時間はもちません。いずれも消費電力が比較的小さく、ポータブル電源が得意とする領域です。
| 場面 | 主な機器 | ポータブル電源での対応 |
|---|---|---|
| 安否確認・連絡 | スマートフォン・無線機・ノートPC | 対応しやすい |
| 避難誘導・夜間作業 | LED照明・投光器 | 対応しやすい |
| 災害情報の把握 | テレビ・ラジオ | 対応しやすい |
| 暑さ・寒さ対策 | 扇風機・電気毛布 | 小型機器なら対応可。業務用エアコンは対象外 |
| 保冷 | 冷蔵庫・保冷庫 | 機種ごとの消費電力の確認が前提 |
具体的には、季節によって停電の重さが変わります。消防庁は令和5年7月14日付の事務連絡で、災害による停電でエアコンが使えない場合の備えとして、熱中症環境保健マニュアル2022の参照を求めています。冬季については、北海道の2014年2月にあった4日間連続平均マイナス7.7℃という条件で、大停電時の死亡リスクを推計した研究もあります。帰宅困難となった従業員を事業所で待機させる場合、扇風機や電気毛布を動かす電源が待機環境を支えます。
(出典:北海道冬季大停電時における循環器系・呼吸器系疾患の死亡リスク推計|佐久間裕也, 高田純, 2020)
注意点として、冷蔵品の保管は条件の確認が欠かせません。飲食店の食材や薬局・クリニックの医薬品、検査機関の検体などは、温度が保てないと廃棄や再検査につながります。冷蔵庫には起動時に一時的に大きな電力を使う機種があり、仕様上の消費電力だけでは判断できません。保冷を任せる機器が決まったら、その機種がポータブル電源で動くかを購入前に確かめることが損失を防ぐ近道です。

📝 補足
事業所が地域の一時的な避難先になる場合、来訪者からスマートフォンの充電を求められる場面も想定されます。受け入れ方針とあわせて、充電に開放する台数や時間帯を決めておくと混乱を防げます。
こうして場面を並べると、ポータブル電源が力を発揮するのは通信・照明・情報収集に使う比較的小さな機器だと分かります。空調や大型の冷蔵設備まで含めると、別の設備が必要になります。どこまでをポータブル電源に任せるかは、事業所の規模と用途によって変わってきます。
補足すると、冷蔵庫は起動時に大きな電力を使う機種があるため、ラベルの消費電力だけで判断せず実機の動作まで確かめるほうが安全だと思います。
企業規模・用途別に見る必要性の判断基準と、据置型蓄電池・発電機との使い分け🔗
定義:BCP(事業継続計画)とは、災害などの緊急時に重要な業務を止めない、または早期に再開するための方針と手順をまとめた計画のことです。
結論:企業規模別のポータブル電源の必要性は、従業員数よりも停電中に動かす機器の数と消費電力で判断します。
- 要点1:停電対策の判断は、停電中も動かす機器を洗い出して優先順位を付けるところから始まります。
- 要点2:ポータブル電源・据置型蓄電池・発電機は、給電できる範囲と運用方法が異なる設備です。
- 要点3:据置型蓄電池や非常用発電機を建物の配線につなぐ場合は、電気工事を伴うため専門家への相談が必要です。
先に要点を挙げると、企業規模の判断で見るべきは従業員の人数そのものではありません。人数が同じでも、事務作業が中心の事務所と冷蔵品を扱う店舗では、停電中に必要な電力がまったく異なります。目指すゴールは、自社のBCPの中でポータブル電源について「どの機器を、何時間、誰が動かすか」まで言葉にすることです。手順は三段階に分けられます。
停電対策の必要性を判断する三段階
- 停電中も動かす機器を洗い出す
部署ごとに機器名と消費電力を書き出し、安全・連絡記録・後回しの3区分で優先順位を付けます。 - 必要電力の規模をつかむ
従業員数・拠点数・業種を重ね、同時に使う電力と使用時間の目安を把握します。 - 設備ごとに役割を割り振る
ポータブル電源・据置型蓄電池・発電機の得意分野に合わせて、給電する範囲を分担します。
最初の段階は、停電中も動かしたい機器の洗い出しです。部署ごとに機器名と消費電力を書き出し、命や安全に関わるもの、連絡や記録に関わるもの、後回しにできるものへ分けていきます。この作業に専門知識はいりません。本体ラベルや取扱説明書に記載された消費電力を集めるだけでも、全体の規模感はつかめます。

次の段階で、従業員数・拠点数・業種を重ねて必要電力の規模を見ます。目安を整理すると次の表のとおりです。西日本全域で250件以上の電波対策工事に携わってきた中で見えてきたのは、同じ業種でも建物の構造や使い方で最適解が変わり、カタログの数値だけでは判断できないという点です。表はあくまで出発点としてご覧ください。
| 事業所の例 | 停電中に動かしたい主な機器 | 考えられる備え方 |
|---|---|---|
| 少人数の事務所(1拠点) | スマートフォン・ルーター・ノートPC・照明 | ポータブル電源を中心に検討 |
| 中規模の事務所・店舗 | 上記に加え複数区画の照明・レジ端末・小型冷蔵庫 | ポータブル電源の複数配置と据置型蓄電池を比較 |
| 複数拠点・工場・医療福祉施設 | サーバー・保冷設備・空調・生産設備の一部 | 据置型蓄電池や発電機を軸に、ポータブル電源は補助 |
最後の段階で、三つの設備に役割を割り振ります。ポータブル電源は持ち運べて屋内でも使える一方、容量に限りがあります。据置型蓄電池は建物に固定して特定の回路へ電気を送る設備で、平常時の電気代対策と兼ねる使い方もあります。発電機は燃料が続く限り発電できますが、排ガスが出るため屋内では使えません。内閣府の業務継続の手引きも、停電に備えて非常用発電機とその燃料の確保を挙げています。

公共工事の現場でも、価格だけでなく根拠のある提案が重視されます。民間の停電対策でも事情は変わらず、機器の洗い出しと停電想定が根拠になっていれば社内の合意は得やすくなります。据置型蓄電池や発電機を建物の配線につなぐ場合は電気工事が必要になるため、計画段階で電気工事の専門家に相談してください。
🔴 重要
分電盤や建物の配線に関わる作業は電気工事士法に関わる内容です。ポータブル電源から建物側へ電気を送るような自己流の接続は事故につながるおそれがあるため、行わずに専門家へご相談ください。
三段階を経ると、ポータブル電源だけで足りる事業所と、ほかの設備を軸に考えたほうがよい事業所の違いがはっきりします。全拠点で一斉にそろえる必要はなく、優先度の高い拠点から備える進め方でも十分です。ポータブル電源を備えると決めた場合は、選び方と日々の運用が次の課題になります。
蓄電池を含めた法人のBCP全体の考え方は、以下の記事で解説しています。
蓄電池防災とは?法人BCPで備える停電対策・容量・選び方の基本
よく聞かれるんですが、判断の軸は規模の大小より停電中に動かす機器の消費電力です。建物の配線に関わる設備は、計画段階で電気工事の専門家に相談してみてください。
防災用ポータブル電源の選び方と運用上の注意点🔗
定義:定格出力とは、ポータブル電源が連続して安定的に送り出せる電力の上限をW(ワット)で示した値のことです。
結論:防災用ポータブル電源は、使う機器の消費電力合計と使用時間から出力と容量を見積もって選びます。
- 要点1:ポータブル電源の定格出力は、同時に使う機器の消費電力の合計を上回る必要があります。
- 要点2:ソーラーパネル充電や拡張バッテリーは、停電が長引いた場合にポータブル電源の使用時間を延ばす手段です。
- 要点3:充電担当者と点検時期が決まっていない防災用ポータブル電源は、停電時に残量不足となるおそれがあります。
災害時に適したポータブル電源とは、どのような製品でしょうか。答えは製品名ではなく、御社が動かしたい機器から導いた数値にあります。前のセクションで洗い出した機器のうち、同時に使うものの消費電力を合計すると必要な定格出力が分かります。そこに使う時間を掛け合わせれば、必要な容量も見えてきます。
たとえば、消費電力10Wのルーター1台と20WのLED投光器2台を8時間使う場合を考えます。同時に使う電力は50W、必要な電気の量は50W×8時間で400Whとなります。実際には電池の直流を交流に変える際に目減りする分があるため、計算値より大きめの容量を選ぶのが実務的です。停電時の使用可能時間は機種や負荷により異なるため、数値は手元の仕様書に置き換えてください。

試算例:ルーター1台+LED投光器2台を8時間使う場合
停電が長引く場合に備える方法は二つあります。ソーラーパネルをつないで日中に充電する方法は燃料を使わずに電気を補えますが、天候や設置場所で充電量が大きく変わります。もう一つの拡張バッテリーは、対応機種に追加の電池をつないで容量を増やす仕組みです。拡張に対応するかは機種ごとに異なるため、将来の増設も見込むなら購入時に確かめておくと安心です。

💡 ポイント
機器の数が多い場合は、大型機1台に集約するより部署や用途ごとに複数台を置く方法も選択肢になります。1台が使えなくなっても全体は止まらず、置き場所の分散にもつながります。
メーカーを横断して製品を比較してきた立場から言えるのは、特定メーカーに縛られず現場の条件で選ぶほうが過不足のない選定になりやすいという点です。運用面では充電担当者と点検日の設定が欠かせません。定期の設備点検の日程に残量確認を組み込むなど、既存の業務に乗せると続けやすくなります。防災用ポータブル電源は、置き場所と充電の担当者が決まって初めて停電時に使える備えになります。
停電中の使い方にもルールが必要です。容量には限りがあるため、通信機器の充電を最優先にし、照明は必要な区画だけに絞るなど使う順番を事前に決めておくと電気を長く持たせられます。安全面では、消費者庁がリチウムイオン電池使用製品の事故情報や注意点をまとめています。製品を選ぶ際は、こうした公的な安全情報もあわせて確認してください。
選定基準を企業での活用視点からさらに詳しく確認したい場合は、以下の記事をご覧ください。
意外と見落としがちですが、直流を交流に変える際の目減りがあるため、計算値ちょうどの容量では停電中に足りなくなるかもしれません。
導入判断から運用までの順番
防災用ポータブル電源の必要性は、製品性能ではなく停電中に動かす機器と想定停電時間で決まります。機器の洗い出し、設備の分担、運用ルールの順に固めることが確実な備えにつながります。
- まず停電中も動かしたい機器名と消費電力を部署ごとに書き出し、安全・連絡記録・後回しの3区分で優先順位を付けてください。
- ポータブル電源・据置型蓄電池・発電機に給電範囲を割り振ってください。建物の配線につなぐ設備は、計画段階で電気工事の専門家に相談してください。
- ポータブル電源を導入する場合は、充電担当者と点検日を決めてください。高温を避けた置き場所と、停電時に使う機器の順番も事前に定めてください。
よくある質問
よくある質問について:実務で直面しやすい疑問や判断に迷いやすいポイントを中心に、読者から多く寄せられる質問を観点別に整理しました。本文と併せてチェックリストとして活用してください。
ポータブル電源の寿命はどのくらいですか?
寿命は充放電を繰り返せる回数(サイクル数)で示されることが多く、電池の種類や製品によって大きく異なります。リン酸鉄リチウム電池を採用し長いサイクル数をうたう製品もあります。購入前に仕様書でサイクル数と保証期間を確認し、更新時期を設備計画に組み込んでおくと安心です。
防災用に保管しているポータブル電源はどのくらいの頻度で充電すべきですか?
ポータブル電源は使わなくても少しずつ放電するため、取扱説明書の推奨に沿って定期的に残量を確認し、必要に応じて充電します。空のまま、または高温の場所で長期放置すると電池の劣化につながります。定期点検の日程に残量確認を組み込むと忘れにくくなります。
業務用の冷蔵庫はポータブル電源で動かせますか?
機種によっては動かせますが、冷蔵庫は起動時に一時的に大きな電力を使うことがあり、ラベルの消費電力だけでは判断できません。ポータブル電源の定格出力と瞬間最大出力に余裕があるかを確認し、可能であれば購入前に実機で動作を試すと損失を防げます。
不要になったポータブル電源はどう処分すればよいですか?
リチウムイオン電池を内蔵しているため、一般ごみとして出すのは避けてください。メーカーや販売店の回収サービス、自治体の案内に沿った処分方法を確認するのが基本です。法人の場合は産業廃棄物としての扱いになる場合もあるため、購入時に回収方法まで確認しておくと安心です。
この記事を読んだ方がよく検索する質問
稟議書でポータブル電源の必要性をどう説明すればよいですか?
停電中に動かす機器名、消費電力の合計、想定する停電時間を並べ、そこから導いた出力と容量を示すと説得力が増します。過去に地域で起きた停電事例や、停電で業務が止まった場合の影響もあわせて記載すると、費用に見合う備えかどうかを判断してもらいやすくなります。
導入したポータブル電源が使われずに放置されるのを防ぐには?
置き場所と充電担当者、点検日を導入時に決めておくことが効果的です。防災訓練で実際に機器をつないで動かしてみると、使い方の共有と残量確認を同時に行えます。平常時も屋外作業やイベントで活用すれば、停電時に慌てず使える状態を保てます。
ポータブル電源から据置型蓄電池への切り替えはいつ検討すべきですか?
停電中に動かしたい機器が増え、複数区画の照明や冷蔵設備、空調まで支えたくなった段階が検討の目安です。平常時の電気代対策も兼ねたい場合も据置型が候補になります。建物の配線工事を伴うため、早めに電気工事の専門家へ相談して比較してみてください。
参考文献
参考情報について:本記事の信頼性を担保するため、公的統計・学術論文・業界専門媒体を中心に、複数の一次情報源を参照しました。各出典は執筆時点で確認できる最新情報に基づいています。
- 防災基本計画|政府機関(.go.jp), 2026
- 家庭(場面)一日前プロジェクト|政府機関(.go.jp), 2023
- 2018年台風24号がもたらした大規模停電による静岡県西部地域医療機関の被害状況と対応|Sohei Hikosaka, 2022
- 停電履歴情報を用いた令和6年能登半島地震による町丁・大字単位の停電GISデータの作成|Kenji Sugimoto, 2026
- リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう|政府機関(.go.jp), 2025
- 事務連絡 令和5年7月14日 各熱中症予防対策担当部局 ...|政府機関(.go.jp), 2022
- 北海道冬季大停電時における循環器系・呼吸器系疾患の死亡リスク推計|佐久間裕也, 高田純, 2020
- 大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き ...|政府機関(.go.jp), 2023
- リチウムイオン電池関連情報|政府機関(.go.jp), 2025
この記事の監修者

味生 豊
aOn株式会社 代表取締役/照明士・照明コンサルタント/第一種電気工事士・電気工事施工管理技士
建設業の電気通信分野で西日本全域250件以上の電波対策工事に従事後、2015年にエネプラを立ち上げ。法人向けLED照明工事の施工管理を年間30件以上担当する。相談に応えるため照明士・照明コンサルタントを取得し、施設照明の設計を専門とする。第一種電気工事士・二級電気工事施工管理技士として官公庁工事約30件を落札、主任技術者として現場を統括した。










