蛍光ランプや水銀ランプ、電球等に代わる次世代の照明として注目されるものがいくつかあります。
無電極ランプやLEDもその一部ですが、いずれも長寿命かつ省電力という特徴があり、今後のエコやランニングコストの低減に対して期待されているのです。
無電極ランプとLEDを比較した上で、その違いや用途別使用法について解説していきたいと思います。
構造や発光原理の違いとは
まず照明器具としての構造や発光原理について解説していきましょう。いずれも従来光源とまったく異なる仕組みになっていることに気付くはずでしょう。
無電極ランプの構造と発光原理
構造としては、インバータ、誘電コイル、フェライトコア、ランプ管によって構成されています。
まずインバータ部が高周波電流を発しコイルに流します。次いでフェライトコアによって磁界を増幅させてランプ管内に電界を発生させます。
その際に放出された電子によって紫外線が発生し、発光体や蛍光体とぶつかることにより可視光に変換されるのです。
LEDの構造と発光原理
LEDの基本的にLEDチップによって発光します。チップは「P/N結合」という構造で成り立っており、以下の2種の半導体が結合されています。
- P型半導体。プラス正孔が多い。
- N型半導体、マイナス電子が多い。
LEDチップに順方向の電圧を流すと、プラス正孔とマイナス電子が衝突・結合して、もともとプラス正孔とマイナス電子が持っていたエネルギーよりも小さくなります。
この時に生じた余剰エネルギーが光に変換されて発光状態となるのです。
したがって、無電極ランプとLEDランプは、発光原理、エネルギー効率、サイズ、色の管理など、多くの点で異なります。使用する状況や要件によって適したものを選択することが重要です。
メリットとデメリット
無電極ランプとLEDランプは非常に優れた照明ですが、完全無欠かといえばそうではありません。次に無電極ランプのメリット及びデメリットについて見ていきましょう。無電極ランプがなぜ日本で一般化されていないのか?理由がそこにあります。
無電極ランプのメリット
まず読んで字のごとく、電極が存在しないため摩耗・消耗による劣化がありません。
その大きな為、大きなメリットは何といってもLEDをしのぐ長寿命でしょう。(LEDの2~3倍)
製品によりますが、60,000~100,000時間が定格寿命とされており、交換する手間がほとんどありません。
また電気を熱としてロスしないため発光効率が高く、管球温度は100℃くらいまでしか上がりません。温暖化防止という意味合いでは最適な照明だと言えるでしょう。
またLEDランプのような光の直進性はあまりなく、360°全面発光が可能です。蛍光ランプと同じく目に優しい効果も期待できます。
構成部品もそれぞれ対候性が強く、高温・低温・高湿度といった過酷な環境下にあっても不具合が起きにくいとされています。
無電極ランプのデメリット
いっぽうデメリットとしては、
無電極ランプを製造しているメーカーが国内にほとんどなく、輸入やOEMなどの頼っていること。そのため初期導入コストが高くなってしまう可能性があります。
LEDの場合は構成部品(チップや基板等)の開発や入手が比較的やさしく、国内市場でもLED照明が一般化しています。
しかし無電極ランプを製造するためには電波法で定められた基準をクリアしなければならず、開発のためには一定の期間とコストが相応に掛かってきます。
そのため国内メーカーが開発に踏み切れないのです。LEDをより高効率化したほうがコストメリットがあるということですね。
また現在ではLEDランプのほうが経済的な点灯方式だとされていて、国内大手のPanasonicも無電極ランプは製造していたものの、2017年に生産終了しています。
無電極ランプを設置する際にはもちろん電気工事が必要になりますが、その際、ランプ本体と安定器を離して設置することは推奨されていません。離して設置してしまうと安定点灯しなくなる恐れがあるからです。
照明工事(水銀灯の場合)は基本的に配線はそのまま流用し、ランプ本体(器具)と安定器の交換工事になります。その為現地の環境次第では施工の効率が悪くなってしまう事も懸念する点です。
ランプ本体の材質がガラス製のため、LEDランプ(ポリカーボネート素材)輸送や設置する場合は注意が必要となります。
LEDランプのメリット
国内の大手照明メーカーがこぞって開発に力を入れているだけあって、費用対効果と利便性・汎用性などが飛躍的に高まっています。
エネルギー消費効率が良好であるため、より少ない消費電力で大光量の光を発するLEDランプが続々と登場しています。無電極ランプほどではないにしても、定格寿命が約40,000~50,000時間とこちらも長寿命の製品になります。
LEDランプは小型で軽量のためデザイン自由度が高く様々な用途で使用されています。また、特定の色の光を直接発生できるため、色彩豊かな照明に使用することも可能です。
また水銀灯と違い、最大の明るさまで瞬時に点灯することができるので、特に工場作業中での停電や誤って消灯させてしまった時などにも、すぐ作業に戻ることができるのも利点の一つです。
LEDランプのデメリット
他の照明と違いLED光源は非常に直進性が高いため、正しい光量や形状の物を選定しないと照明と照明の間に影ができてしまう事も良くあります。そのため現地環境を把握して光をいかに拡散させるかが大きなポイントとなります。必要以上に大光量になればなるほど「人間の目に優しくない」ことになり、製品によってはまともに直視できないケースも少なくないのです。
また、LEDランプは微量ではありますが消費電力に応じて熱を放出する仕組みですが、チップ自体は熱に弱いため80℃以上の高温環境になるとランプの寿命自体が短縮してしまう可能性があります。(最近では耐熱性能の高い器具も取り扱いが増えています)
それぞれが使用される最適なシーンとは
無電極ランプとLEDについて、おそらく両者は今後棲み分けされていくでしょう。それぞれの特性を生かしたシーンを具体的に見ていきましょう。
無電極ランプが最適なシーン
先述したように、無電極ランプは家庭用など小出力の照明にはあまり適していませんが、その特性を生かした設置場所であれば、おおいにメリットが期待できます。
例えば、従来まで水銀ランプが設置されていた高天井の建屋内や街路灯・公園灯など。また屋外の看板照明やサイン灯などが最適でしょうか。
特に街路灯やスポーツ施設等に設置された場合、強い光で幻惑されることはまずありません。また眩しくなく目に優しいという効果も期待できます。
また長寿命ゆえにランプを頻繁に交換しなくても済むため、メンテナンスフリーで保守管理費用を抑えることが可能です。
LEDランプが最適なシーン
小型かつ汎用性が高いため、現在においても様々なシーンで利用されています、一般家庭用照明をはじめとして、事務所、店舗、工場などの産業分野に至るまで広く活躍することでしょう。
また製品としてのパッケージ化がかなり進んでいるため、既設照明のリニューアルに広く対応しています。
まとめ
無電極ランプとLEDの違いについて述べたわけですが、無電極ランプについては海外ではすでに一般化しています。
かたや日本国内ではLEDが主流となっており、独自の進化を遂げつつあります。まさにガラパゴス化しつつあるのではないでしょうか。
いずれにしても、それぞれのランプが持つ特性を意識しつつ、うまく棲み分けしていくことが大切ですね。